2020年12月23日水曜日

『雪崩事故事例集190』 出川あずさ著 2021年1月5日初版第一刷 山と溪谷社



『雪崩事故事例集190』 出川あずさ著 2021年1月5日初版第一刷 山と溪谷社

過去30年間の日本国内での雪崩事故、 190事例を詳しく分析しています。

雪崩死亡事故は 平均 年6件発生で 年9人死亡ということで

多発する 中高年の 道迷い・転落滑落 遭難事故に比べ 少ないので 多雪地帯以外では 雪崩に対する認識も低いのでしょう。

また 190雪崩事故の分布は 中部山岳 や 北海道 東北 北陸の事例が多く、西日本では 大山付近、氷ノ山付近、と愛媛笹ヶ峰 事故例など 計6件についての 記述です。

■西日本では 地域的に 雪崩事故には やや 関心が薄くなりがちですが、

 序文のなかで きわめて示唆に富んだ 言葉があります。

”「どのような雪崩事故であれ、必ず、自分も同じような事故を起こしうる」と考えることが必要不可欠です。この視点を欠いていれば本書を読んだとしても、最も重要な点を理解できないままになるでしょう。”


■四国山地では 降雪は そこそこ降っていますし、雪崩地形は どこにでも あります。

実際 四国でも 何件かの 雪崩遭難が おこっています。

雪山へ向かうときは 雪崩は 他人事でなく 明日は我が身という 気持ちをもって いないと いけません。

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■ところで 2020年12月14日

全国オンラインZOOMで アバランチナイトが開催されました。

日本雪崩ネットワーク(Japan Avalanche Network)

いままで アバランチナイトは多雪地域や首都圏中部などが主に開催されていて 西日本では大阪で 開催していていました。

 過去何度か 大阪まで聴講しに いきましたが 今冬は コロナ禍で オンライン 開催。

大阪開催では まず聞けなかった 新潟 白馬 などの 大雪地帯の 雪崩対策専門家や スキーパトロール 山岳ガイド 山岳遭難救助隊の話が 直接 きけて 大変参考になりました。

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■誤った成功体験 『雪崩事故事例集190』 出川あずさ著 62ページ

「ある斜面が雪崩れると わかっていて滑り込む人はいないだろう。つまり当事者の積雪コンディションに対する確信が、どこかで誤っていたがゆえに事故は発生する。

同じ斜面でインシデントが発生すれば、自分の判断が危うかったことに気づくキッカケになるかもしれない。

しかし、それがなかったらどうだろう。

積雪には雪崩を発生させうる脆弱性が存在していたにもかかわらず、自分の状況認知は適切だったという「誤った成功体験」しか残らない可能性が高い。そしてそれは次の意思決定に影響を与える。

誤った成功体験が生じるのは、結果が良ければ意思決定も良かったに違いないと、私たちは考えがちだからである。

意思決定と結果を短絡的に結びつける考え方にいると 良い意思決定をしていても、悪い結末がありうることを忘れてしまう。」

62ページ
『雪崩事故事例集190』 出川あずさ著 2021年1月5日初版第一刷 山と溪谷社

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2020年5月19日火曜日

お亀岩避難小屋 雪崩



■夏季には  お亀岩避難小屋 周辺で テント設営しているのを見かけます。

2005年6月22日撮影

無積雪時は 問題ないとしても

積雪期 大雪のときは
お亀岩避難小屋 自体が 雪崩の危険にさらされています。

お亀岩避難小屋 周辺の幕営は とても危険です。くれぐれも ご用心ください。


2011年2月26日

■大雪のとき お亀岩避難小屋周辺 背後からの雪崩に注意

お亀岩避難小屋は 山稜 直下の南面に位置。

大雪の 冬。

 お亀岩の鞍部は 漏斗状の地形になっていて 冬の季節風で 北側からの風が強くふき 地吹雪 風雪などによる、大量の降雪が
かき集められ山稜を越えて小屋の背後の南面斜面に 短時間に 大量に 溜まっていきます。

小屋裏の 南面斜面は 傾斜角などから 雪崩れやすい いわゆる 典型的な 雪崩地形と なっています。

雪が少なければ 問題ないですが 大雪のとき 大量な雪が 不安定な状態で 貯まっていて、ときに雪崩が小屋を 襲う可能性も あります。

雪解けのあと 小屋の背後にあった 太い樹林が折れたり 押し流されて いるのも見かけたりします。

冬期 三嶺 西熊 天狗塚の縦走の際には お亀岩避難小屋の状況を 稜線から 確認するようにしていますが、ガスや風雪で視界がない場合も あります。

いままで 雪崩 直後で はっきり小屋に影響するような 雪崩あり、雪崩痕あり と視認したのは 以下のとおりです。

■2011年2月26日
http://shumiyama.blogspot.com/2012/03/23226.html

■2014年2月2日
http://shumiyama.blogspot.com/2014/02/201422.html

■2010年1月24日
http://shumiyama.blogspot.com/2010/01/2010124.html

■2008年2月23日
http://shumiyama.blogspot.com/2008/02/2008223.html
などで

雪崩後 少し時間立っていたのではと思われるのは

■2006年1月15日
http://shumiyama.blogspot.com/2006/01/18115-1757181218151893.html

■2006年2月12日
https://shumiyama.blogspot.com/2006/02/2006212.html

などです。


ここ 最近は暖冬気味で 降雪が少ないですが、

もし 平年並みか それ以上に 降雪量があったとしたら、かなりの確率で 小屋に影響する 雪崩発生の可能性が 考えられます。

また 大雪の年は 一冬で 何度も 雪崩れるようで、大雪があるたびに その都度  雪崩れる 事もあるようです。

一度 雪崩れて また 安全でなく また積もって 雪崩れ 積もって また 雪崩れると 考えられます。

2014年2月2日のときは 前日(2月1日) 小規模な雪崩があり 次の日までに大きな雪崩が発生したようでした。

■ラベル お亀岩避難小屋
http://shumiyama.blogspot.com/search/label/%E3%81%8A%E4%BA%80%E5%B2%A9%E9%81%BF%E9%9B%A3%E5%B0%8F%E5%B1%8B%E9%9B%AA%E5%B4%A9


■お亀岩避難小屋 積雪期 定点観測 

http://shumiyama.web.fc2.com/kiroku-huyu/teiten/okame_koya.html

■お亀岩避難小屋 定点観測 Jimdo
https://shumiyama.jimdofree.com/%E5%AE%9A%E7%82%B9%E8%A6%B3%E6%B8%AC/%E3%81%8A%E4%BA%80%E5%B2%A9%E9%81%BF%E9%9B%A3%E5%B0%8F%E5%B1%8B/

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【動画】

2014年2月2日

2011年2月26日



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参考までに 槍平小屋周辺の雪崩

■北アルプス槍平小屋では 小屋周辺で幕営泊中に雪崩遭難がおきています。

1973年11月 小屋の すこし上で 就寝中の雪崩で 5名死亡。

2007年 年末から2008年正月にかけて 槍平小屋周辺で複数のテントが雪崩に襲われ 4名が埋没死亡。

2007年末~2008年正月 4名死亡
http://yaridairagoya.sakura.ne.jp/nadare.html

2010年にも槍平小屋雪崩被害 小屋破損
http://yaridairagoya.sakura.ne.jp/2010yaridairanadare.html

2017年にも槍平小屋雪崩被害 小屋破損
http://www.yaridairagoya.sakura.ne.jp/2017nadare.html

槍平冬季小屋のご案内
http://yaridairagoya.sakura.ne.jp/toukian1%20(2).html

昔の槍平小屋は別の場所でしたが 雪崩でやられて 今の場所へ移転しましたが、それでも 雪崩からは 逃れられないようです。

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2017年12月21日木曜日

2017-2018シーズンのアバランチナイトで思ったこと


2017-2018シーズンのアバランチナイトで思ったこと

 ■アバランチナイト NPO法人日本雪崩ネットワークのアバランチナイト アバランチナイトは雪崩事故防止活動などで活動しているNPO法人日本雪崩ネットワークが雪崩事故防止啓発のために行っているセミナー。

 ■昨 2016-2017年のシーズンの雪崩死亡事故は14件、21名。 内訳は 7件が登山、スキー2件。ボード2件。スキーパトロール1件、その他2件。 なかで注目すべきは組織登山者、経験年数を経た ベテランの事故が多いこと。 某山岳団体の大ベテランも事故に遭遇。

■経験者に ありがちなのは 数多くの経験によって とかく いままで 大丈夫だったから 今回も まあ大丈夫ではないかと 判断しがちになること。

あとで 検証すれば 途中までは いい判断 いい判断 いい判断を それなりに適切に行っていたが 最後に 雪崩に巻き込まれた。 では途中まで良かったのに なぜ最後に事故にあったかは 本当のところ よくわからない。 

お亡くなりになった ご本人に 聞くしかないしかないのだろう。

 ■かように 自然界には 分からないこと 知らないことがいっぱいある。

大局的にみれば 大自然の悠久の営みに比べ 一人の人間のたかだか数十年の経験など しれているのだ。

 自然は、人知を超えたものがあり 実際 何が起こるかわからない。

■もともと 山の雪は案外 「丈夫で安定している」という。

だが このことで 熱心な人ほど自信過剰に陥りやすい。

つまり 謙虚さがなければ、経験は過信につながる。
 雪山では 過去の経験は たかがしれていると つねに謙虚さを忘れず すこし おっかなびっくりの 臆病なぐらいが ちょうどいいのかもしれない。

 

ThinkSnowのなかに 私の写真もあり 使っていただき 光栄でした。

 

2017年6月8日木曜日

ブラックダイアモンド ジェットフォース エアーバック


2017年5月31日のセミナーで  充電式 エアーバックが 実際に作動する様子を 拝見することができた。
雪崩対策で 従来の 3種の神器 はビーコン スコップ プローブ。

  それに加え いま欧米ではエアーバックが かなり普及しつつあるという。

ブラックダイヤモンド ジェットフォースは充電式リチウム電池で空気充填200リットル、満充電で雪崩遭遇4回まで対応可能。

4秒で空気充填し、はじめ3分間は空気補充。3分後 自動的に空気を抜き 200リットルの呼吸空間をつくり、生存脱出のための空間を確保。

ジェットフォーステクノロジーを搭載し、雪崩に遭遇したときのリスクを軽減。



実際、雪崩に遭遇した際の 映像。
2017年1月11日 Whistler, British Columbia, Canada 


ブラックダイアモンド ジェットフォース エアーバック
サーガ 40 ジェットフォース 40リットル

https://www.lostarrow.co.jp/blackdiamond/info/2016/IF2016_BD_Jetforce.html

サーガ 40 ジェットフォース
http://www.lostarrow.co.jp/store/g/gBD46100001004/

取扱説明書
https://www.lostarrow.co.jp/blackdiamond/support/manual/OM_BD_Jetforce.pdf

2015年2月12日木曜日

『山岳雪崩大全』雪氷災害調査チーム 編 2015年2月5日 初版 山と溪谷社



『山岳雪崩大全』雪氷災害調査チーム 編 2015年2月5日 初版 山と溪谷社

 『最新雪崩学入門』1996、続編 『決定版雪崩学』2002 に続く 続々編といえる本で 雪崩について ことに 登山 スキー、スノボ などの対象となる山岳地帯での雪崩についての最新の 知見が盛り込まれている。

事故事例の分析も 新しい。

2013年11月23日の立山 真砂岳での7名死亡
2012年の三段山
2011年 猫魔ヶ岳
など など

もとより 雪は

「こな雪 つぶ雪 わた雪 ざらめ雪 みず雪 かた雪 春待つ氷雪」
など どころではない ぐらいに

つねに刻々と 変化し 氷か、水か、大気に昇華か などと 七変化どころか 変幻自在に 千変万化する。


降雪後 雪質や形の変化とともに 天候により 場所的には 同じ場に とどまって いる雪もあるし 風に飛ばされたり 重力にしたがって 移動していく 雪もある。

短時間 あるいは 長時間かけて 地球の重力の法則に したがって 低い方に 低い方に 徐々に あるいは 急速に 急激に 動いたりする雪も でてくる。

雪崩の速度は 新幹線のような 超スピードになったりするし、氷になって動く 氷河などは じわじわ と 年に何センチとか ゆっくり ゆっくりと 低きに流れるように 下に下に流れていく。

雪の変化 移動の 変幻さなど 姿や形や動きなど 人間がすべて わかったとして理解して 雪の動きを予測し 察知するのは、たいへん難しいことだ。

たとえ ほんの少しの 雪の動きの 予兆でも 細心の注意で 探し出すことさえも そうたやすいことではない。

むしろ 本書を見れば 雪の変幻さは ますます わからないことの方が 多いのでは と思ったりもする。

実際のところ わからないことばかりなのだろう。

そんな状態でも 我々は どうすれば 少しでも より 安全に 雪山に接することができるか?


 雪山では どう準備し どう行動すれば ど少しでも危険リスクを減らすことができるのか?

そして 不幸にも もし 万が一 雪崩にまきこまれたときの対処の方法 など  しっかりした指針を本書は示唆してくれて、最新の情報がしっかり盛り込まれ 「大全」にふさわしい 内容になっている。

 この本を読んで とくに ずばり気をつけなければと 思ったのは 以下の

 佐々木大輔氏の 実際体験の話。


「-------他人のシュプールがどれほどあっても、安心はできない-------」
というのを

 スキーヤーを 登山者流 で言えば

「他人のトレースがいくらあっても 安心はできない。」
ということになる。


以下 本書からの引用。182-183ページ 佐々木大輔氏
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■2006年2月フランス トロワバレー クーシュベル。

(ガゼックスとは ガスによる人工雪崩発生器)

「------ガゼックスによるコントロールがあり 数百人の滑り手が滑った後であっても、時には雪崩のトリガーになるスイートスポットが残る、ということだった。」

■2013年11月23日 立山

(この日 7名死亡の雪崩遭難が発生した)

「 すでに 数十人の滑り手がこの斜面を滑っていたのだが、この夕方近い時間までスイートスポットが残されていたようだ」

「このふたつの事例を間近に体験し、他人のシュプールがどれほどあっても、安心はできないと心に刻み込んでいる。」佐々木大輔氏
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2015年2月6日金曜日

2015年2月1日 お亀岩から 天狗峠までの区間 




獲物を追う 猟師は 雪面に残された 動物の足跡から 多くの情報を得て 的確に 判断する。

同様に 雪面に残された 登山者のトレースから いろいろな情報を 得ることができる。

 登山者トレースから 単に人数 履物 歩幅 ペース 装備 など 表面的な 動きや 情報を読みとるだけでなく ルートのとり方などから  経験 判断力 など 大げさに言えば 山に対する考え方までも 知ることができる。

2015年2月1日 お亀岩から 天狗峠まで まだ新しいトレースがあった。

雪庇などの危険個所など 含む お亀岩 天狗峠のあいだでは
ルートのとり方が 危険回避のキーポイント。

2015年2月1日 天狗峠迄の間のトレースからは 先行の 一行は 基本を押さえた 手堅い 動きをしている 感じがし、山に対して 取り組む真摯な姿勢も 伝わってきた。

もっとも 雪山は天候 雪質など 与えられた条件は 時々刻々 変化する。

ことに 四国のような 南国の雪山は 一日のうちで 雪質の変化が 激しい。

先行者がトレースをつけた時間には 正解でも 何時間か経過したあとに 後続が 通過する時間帯には 状況が一変していることも多い。

やはり 通過する その時間にあわせて 自分なりに その都度 的確にルートを判断して進んで いくことが求められる。


過去には おなじ お亀岩 天狗峠 間で 目を疑うような光景に出くわしたこともあった。
2010年1月24日 全く無知なパーティーを目撃し驚いた。


拡大

温暖な地域でも 、雪山は 危険が一杯。


http://www.youtube.com/watch?v=mGAh8R0AJCQ

2015年2月5日木曜日

西熊山 南面 一週間後 みると 案の定 雪崩れていた。

西熊山 南面 一週間後 みると 案の定 雪崩れていた。




2015年1月24日 西熊山 南面




2015年2月1日 西熊山 南面




2015年2月1日 西熊山 南面



2015年1月24日グライドで おおきな クラックがはいり

もうすぐ雪崩れるとおもっていたが


一週間後 みると 案の定 雪崩れていた。


前週1月24日に続けて 2月1日も

西熊山 山頂へ 稜線つたいにたどるのはやめて
より安全側のルートを辿った。




北側の斜面でも 風が吹いて注意するのは
吹き飛ばされた雪の堆積で できる ウィンドスラブ


この付近の山域 矢筈山で


一見 安定しているようにみえる 雪面が 亀の甲羅状に 一気に崩壊するなど
ウィンドスラブには 過去  痛い目にあったこともあり


風で吹き飛ばされてきた雪の罠

ウィンドスラブ帯があるかもしれないので はいりこまないように

雪面を より注意深く 読んで進んでいかないといけない。